「最初は、頼まれもしないのにあれこれ口を出すぼくに『おまえに言われる筋合いはない』みたいな雰囲気が生まれかけた。でも監督が、『日本人俳優に出演してもらっているのは、きちんと日本を描きたいからだ』と態度で示すようになって、少しずつ壁が崩れていったね。ハリウッドのスタッフは、本や写真を通してものすごくリサーチしていたけど、実際にどうしたらいいのか分かっていないこともあった。カットされたシーンなんだけど、山高帽をかぶった日本人の首をチョン切るアクションがあったんだ。実際にぼくが剣道の動きでそのアクションをやって見せたら、みんなの態度が変わったね。撮影に入って1ヶ月くらい経った頃だったかな。だんだんぼくに聞きに来るようになって、”ミスター・スーパーバイザー”って呼ばれるようになったんだ。たとえ自分の出演シーンがなくても、時間が許す限り現場に行って間違いを直していったんだ。」
トムのトレーナー?!
正しい日本を描きたいという真田さんの努力はこれだけではなかった。トム・クルーズが話す日本語のセリフでも相当粘ったようだ。
「現場では、時間に制約があるから、トムが日本語でしゃべるシーンは、ある程度間違えないでしゃべれたら次に進んでいった。そうしたシーンのアフレコ(録音スタジオで画面に合わせて声だけを録音すること)にぼくも立ち会ったんだ。トムの隣で、まず彼の日本語のセリフをぼくが感情込めて言って、それをトムがリピートして録音した。発音がマズイところは何度でもやり直してもらったよ。だってシリアスなシーンなのに、変なアクセントのためにクスって笑えてしまったら雰囲気が台無しになるからね。監督だけでなく、ぼくのOKが出ないと先に進めないという状況だった。中には20テイクまでやったものもあったけど、トムは絶対ギブアップしないで何度でも一生懸命やっていたよ」
トムの日本語セリフには違和感がなく、日本人の観客もスムーズに感情移入できる。これは真田さんの熱意の賜物だったのだ。
ハリウッドらしい映画作り
ハリウッド映画に初参加した真田さん。驚きや戸惑いはあったのだろうか。
「予算の規模が違うから、衣装やセットなどもかなり凝っていたし、スタッフの数も多かったね。フィルムと時間とカメラを贅沢に使っていたことにも驚いた。でも何よりも”ホールド”というシステムには参ったね。電話があったら30分以内に家を出れるようにしてなきゃいけない、いわゆるスタンバイ状態のことなんだけど、朝からずっと『いつでも来い!』ってテンションで待っているのに、夕方にやっと『今日はなくなりました。休みを楽しんでね』って言われることも多い。フラストレーションをためず、後ろ向きにならず、リラックスしすぎず、体力を温存する。日本はそこまで贅沢に役者の時間を押さえることはできないから、今まで経験したことのないこのやり方に馴れるのに苦労したよ」
今後はハリウッドにも活躍の場を広げたいとして、「種まきの最中」という真田さん。得意の英語力とアクション、演技力を生かして羽ばたいて欲しい。

